ソナーと海洋汚染
 海洋汚染とは穏やかでは無いようですが、ここでは「生態系の混乱を誘う」程度の話として捉えてください。

 船の先端の水中部分には、ソナーが装備されています。
 これはアクティブソナーと呼ばれる装置で、強力な音波を出して跳ね返ってくる音を頼りに相手の存在を調べる装置ですが、この装置は水に浸った状態で、まわりに硬質ゴムの幕を張った構造になっています。
 このソナードームは潜水艦では開放式になっており、水上艦では密閉式になっています。
 開放式の場合は、常に海水が出入りしているので問題ないのですが、密閉式の場合は偶に海水を入れ替えることで、全く違った場所の海水を湾内に撒き散らしてしまうことになります。

 海水は様々なプランクトンなどの微生物や、大型の魚の卵を含んでおり、場合によっては違った場所の海水を巻き散らかれた港の生態系を破壊することもありうるのです。

 同じような事が船の「バラスト」と呼ばれる水にも言えるのですが、上記のような理由から、無暗やたらにバラストやソナードームの水を巻き散らかさないルールが国際的に決められており、各船はそのルールに則って運用されています。

 とは言え、経済が発達しきっていない国の船等が、そういったルールを守っている保障はないのですが。
 (一昔前ですが、旧ソ連の軍艦が核廃棄物を日本海に垂れ流しているのが見つかって、大騒ぎしていたくらいですから・・・)
地球深部探査船「ちきゅう」の推進機構
 日本が作った世界に誇れる船で、地球深部探査船、その名も「ちきゅう」という船があります。
 この船は全長200m以上の巨大船で、船底に6基のアジマススラスタを装備しており、GPSに連動した自動船位保持システム(DPS)により海のど真ん中でも半径15m以内に、船位を固定制御できるという、とんでもない機能を持っています。
 この機能は、海に浮かんだ船の上から掘削ドリルを海底に突き刺して、地底の土の試験片を採取するためのものですが、なんと船底下1kmもの掘削が可能と、これまた世界一の能力を誇っています。

 しかし、これだけの最新技術ともなると、それを作るには苦労が付きもので、船位保持システムとアジマススラスタの連動機能の調整もなかなか大変だったそうです。
 このシステムの最終試験では、船位保持システムを使って船位を固定したまま、何時間も船を360°その場旋回させ続けたとのことで、艦橋にいるスタッフの人達も、試験員の人達も、全員目を回すやら、船酔いになるやらで大変だったようです。

 この試験は、人目に付かないように沖合に出てから実施したとのことですので、残念ながら外部の人でその様子を見学できた人は少ないと思いますが、200mを超す巨体がいつまでもグルグル回っている様は傍から見ればさぞ不思議だったことでしょう。
ヨーソローの意味
 よく、映画等を見ていると船乗りさんが「ヨーソロー」と叫んでいるシーンが見られると思いますが、意外とその意味を知っている人は少ないようです。

 最初に言っておきますが、「ヨーソロー」は日本語です。(漢字で書くと「宜候」:ヨロシイ+ソウロウ)
 外国の船で、これに値する号令は「ミズシップ」(Midshipが訛ったもの)です。
 現代の船を操船する上での号令は、英語が基本になっているので一般商船では既に「ヨーソロー」という言葉は使われていませんが、海上自衛隊の船では今も日本語による号令の一つとしてヨーソローが使われています。

 良く耳にする日本語の号令と、それに対応する英語の号令を参考に示すと次のようになります。

   面舵(おもかじ) = スターボードもしくはスタボード
   取舵(とりかじ) = ポート
   宜候(よーそろー)= ミズシップ

 面舵とは船が右に曲がるように舵を切ることで、良く耳にする「面舵10度」とは、「船が右に曲がるように舵を10度曲げなさい」という号令で、英語では「Starbord - ten」となります。
 取舵はその逆です。

 ここで、ヨーソローの意味は、舵を中央に戻すことを言いますが、これを感覚的に理解するには船の走り方を念頭に考える必要があります。
 と言うのも、普段に陸上を歩いたり、車で移動している私達の進み方と、船の進み方は根本的に異なるためです。

 陸上を移動する時には、人はあまり意識せずに何か対象となる物体を目安に方向を考えています。道を歩いていて右に曲がろうとすれば道路に沿って曲がりますし、道路に沿わなくても塀や電柱、もしくは道路脇の猫等を目安に曲がっているかもしれません。
 例え草原のど真ん中でも、遠くの山や木々を目安にすることができます。
 こういった場合、針路の基準になっているのは、それまで自分が向いていた方向です。
 「今、向いている方向より更に右に90度曲がって、○メートルぐらい進んだところで左に90度曲がれば目的地に近付く」といった(これを脳内地図と言うそうです)ことを無意識に考えているはずです。
 しかし、海のど真ん中では目安になる対象物は何もありません。真っ白の紙の中心に点を書いて(これが自分と仮定して)紙をグルグル回しているのと同じで、方向感なんて全く無いのです。 (「今の状態から○度曲がって・・・」といった考え方が出来ないんですネー)

 そのため船は、出入港等の特別な場合を除いて、必ず北を基準とした角度で自分の進む方向を示します。
 「東経○度○分、北緯○度○分の位置に付いたら、(北を基準として)○度の方向に進行方向を変える」とか、「犬吠埼灯台が(本船から見て)○度の方向に見えたら、(北を基準として)○度の方向に進行方向を変える」等の進路変更を繰り返しながら走っているのです。(このポイントを変針点といいます)
 ここで、針路を変える時に使われるのが先ほどの号令で、変針点に達したところで「面舵10度」 といった号令がかけられます。
 そして、予定していた針路を向いたところで「ヨーソロー」(=舵を中央に戻して、今の針路を維持しなさい)の号令となる訳です。

 「ヨーソロー!」とか「面舵○度!」といった言葉を一般に広めたのは、海賊漫画や軍事漫画を得意としていた、かの松本零士氏かと思いますが、そうして考えると、松本零士氏の漫画等でも「ヨーソローの使い方がちょっとオカシイかな」と思ってしまう時もありますが・・・
軍艦の消磁とは
 第二次大戦中の軍艦の模型を作っていると、船体の周りをぐるりと囲むように1条のケーブルが巻いてあることに気づく人が多いと思います。

 これは消磁ケーブルと言って、大戦中にドイツが開発した磁気機雷の類に対処しようと、船の磁気を消すために考案されました。
 実際の効果は如何なものであったか釈然としませんが、イギリスではこの方式でそれなりの効果を上げたとの報告があったようです。

 原理は極めて単純で、中学校くらいでならう「右ネジの法則」そのままに、電線に直流電流を流して船の磁気と逆方向の磁気を発生させて打ち消すものです。

 この消磁装置は、基本原理は当時のものと同じまま、今の軍艦にも搭載されています。
 昔は船体の外側にケーブルを巻いていましたが、現代の軍艦では船体の内側に巻いています。
 ケーブルの種類も増え、昔は上下方向の磁気を消す(Mコイル)だけでしたが、船の前後方向の磁気を消す(L)コイルや、横方向の磁気を消す(A)コイルも装備するようになりました。
 更に、船体の動揺や、船がいる緯度経度から必要な磁気を自動演算して、必要な電流を制御するものになっています。

 また、搭載している消磁装置だけで全ての磁気を消そうとすると効率が悪いので、予め消磁所と言われる場所で大まかに船体の磁気を消しておいて、残った磁気を消磁装置で消しながら船を走らせる運用になっています。
 消磁所での船体の消磁作業は、まるでボンレスハムの様に、本当に船体にケーブルを巻きつけて、大電流を流して消磁するもので、日本では横須賀と佐世保に、このための設備があります。

 船が磁気を帯びるのは、もともと建造途中にその場所の地球磁気に影響を受けて磁化されてしまうことが要因の一つであり、同様に船の運用中にその場所の地磁気で磁化されることもあります。
 また、磁性体である船体が地球磁気の中に存在することで、本来の地球磁気を歪めることで発生する磁気もありますが、いづれも数μテスラ程度の磁気でしかなく、軍艦というものが如何に微細なことまで考えて作られているかが判る良い例だと思います。
軍隊ラッパのトレビア
 知っている人には当たり前ですが、実はあまり知られていないことで、軍隊が使うラッパには音階を調整するための機構(トランペットでいうところのピストン)がありません。

 このラッパ、正式名称は『ビューグル』と呼ばれるもので、日本では軍隊ラッパとか信号ラッパと呼ばれています。

 もともと、音楽を奏でるためのラッパではなく、音を使って遠くまで信号を伝えるための物であり、良く聞く「突撃」の他にも「起床」や「国旗掲揚」時の君が代、「出航」等、様々なシーンで今も使われています。

 特徴として、このラッパにはピストンとかバルブとか呼ばれる音階を調整する機構が付いていません。
 このため、あのいろいろなメロディーは、ラッパを吹くときの唇の形だけで吹き分けられているのです。
 当然、吹く人の錬度によって、そのズッコケ度はまちまちであり、朝に港に泊まっている軍艦の横を通ると稀に、如何にも入隊直後の新人さんが吹いているであろう、抱腹絶倒物のラッパを聞くことができます。

 ただしこのラッパ、本当に難しいらしいので、あんまり笑ったら失礼です。(影に隠れて笑いましょう)
防衛産業は火の車
 なぜか防衛産業というと、真っ先に事業仕分けの対象になりそうな、お金をジャバジャバ使いまくっているように取られがちですが、実際は全く逆です。
 この議論で間違えてしまう人は、市場経済の根本が理解できていないのかと思います。

 私が昔、パソコン上で動くある会社の生産管理システムを見積ったことがありますが、この値段をめぐって当時の営業課長と大喧嘩になったことがありました。
 パソコン3台でネットワークを組み、1ヵ月分の生産スケジュールを入力すると、現場のラインに自動的に指示を送り、実績を表示するシステムで、確か数千万円になったと思います。
 それに対して、この営業課長曰く
「きょうび、ワープロだって1万円もあれば買えるんだ!、お前らの作るプログラムはワープロより凄いと思っているのか!」っと。
 こんな市場原理の基礎もわからない人間が営業課長をやっていること自体、良く会社がもつものだと思いましたが、要はこの営業課長ががんばって、同じシステムを1000件のお客さんに売れば、ひとつ数万円になる計算です。
 実際のところ、こういったシステムは、そのお客さんに特化して開発するもので、それが持ち味になっている訳です。
 中には老人が多いからって理由で、超特大文字ばかり使ったシステムを作ったこともあります。

 日本の防衛装備等は非常に調達数が少なく、船に限って言えば年間で10個にも満たない超特殊な部品なんてのもあります。
 普通ならホームセンターでも買えそうな、ちょっとした部品でも、あまりに特殊な要求のため、企業はその部品を作るためだけに、生産ラインを準備し、人を確保しなければならないのです。
 それとともに、防衛装備品には特殊な検査に合格することが求められるため、通常の製品と比較しても何倍もの手間がかかってしまいます。

 また、一般の世界では例えばテレビのリモコンが壊れたとしても、部品を交換して終わりなのですが、防衛産業ではそうはいきません。
 例えプリンターが止まっただけでも、何がどのように悪かったのかを徹底的に突き詰めて、場合によっては全ての該当品を速やかに交換しなければなりません。
 それは戦闘に使うという都合上必要なことだとは思いますが、企業として嬉しい事では無く、これを『普通の値段』と比較されては、とてもPAYできる仕事ではありません。

 その他にも、癒着防止のための縦割り行政の持つ問題点もあります。
 具体的に言うと、「こういった装置が欲しい」と言う人と、その装置を開発させる人と、それを買う人が全部バラバラなのです。
 結果、どういったことが起きるかと言うと、装備を要求する側が金を準備して企業と仕様を詰め、問題点を解決して具体的な案を起こしても、いざ入札の段階では別の部署の人が、単純に見積金額の高い安いで、それまで話を進めてきた企業を斬ってしまう可能性があるのです。(一時流行った1円入札等)
 これでは、最初に装備を希望した側も困ってしまうので、勢い当初の企業に入札価格を下げるよう働きかけます。
 結果、現在では日本の防衛産業では、受注しても費用をPAYするのは難しくなってきています。
 そのような状況にも関わらず、未だに防衛産業にいる企業はまるで「ブラックゴースト団」のような眼で見られるのは可笑しなものでしょう。

 防衛産業は、非常に多くの基盤産業の上になりたっていますが、F2支援戦闘機に係る数10の企業の半分以上が防衛産業からの撤退を検討中、もしくは余儀なくされているのが現状で、その多くは町工場等の中小企業なのです。
叩いても壊れません(HI1A)
 防衛装備品といえば、頑丈だろうとすぐに想定されると思いますが、これは当たっています。
 ただし、頑丈さにもレベルがあり、もっとも頑丈さを要求されるのは軍艦であれば、沈まないため、走るための装備です。(きっと、武器が一番と思っていた方々はハズレです。)

 この頑丈さのレベルは、耐衝撃適性階級とよび、次のとおりに区分されています。

HI1A
 一番キツイ階級で、戦闘艦に搭載される機器でも特に、艦船が被弾しても、その衝撃で破損したり誤動作したりしてはいけない階級です。
HI2A
 掃海艇(木造)等に搭載する機器で、被弾しても、その衝撃で破損したり誤動作したりしてはいけない階級です。
HI1C
 自艦が攻撃をした時の衝撃で破損したり誤動作してはいけなくて、且つ被弾してもその壊れ方が周囲に危害を与えないもの。
HI2A
 戦闘艦に搭載する機器で、被弾したら壊れてもいいけど、使える範囲の壊れ方のもの。
HI2B
 掃海艇等に搭載する機器で、被弾したら壊れてもいいけど、使える範囲の壊れ方のもの
HI2C
 自艦が攻撃したときの衝撃で、少し誤動作するくらいはいいけど、被弾してもその壊れ方が周囲に危害を与えないもの。

 一般的に推進装置や、艦内の通信装置等はHI1A対応で作られており、その試験には特別な器具を使用します。
 特別な器具とは?
 試験対象となる装置を分厚い鉄板に取り付けて、後ろと、上から巨大なハンマーで叩くための試験器具で、その名も『衝撃試験装置』と呼ばれています。さすがに直にハンマーで叩いたらペシャンコになってしまいますから、取り付けた鉄板の方を叩くわけですが、実際にはとてつもない衝撃が試験対象の装置にかかっています。
 衝撃試験を実施する時には、周りにいる人達に耳栓が配られますが、クシャリと潰れるならまだしも、全く変形しない単なる鉄の塊同士が思いっきりぶつかる時の音は凄まじく、大抵の人は一度見学したら「二度目は結構です。」と言うそうです。
飛行機の搭乗口が左にある訳
 今回はいきなり飛行機の話からスタートします。

 ほとんど誰でも飛行機に乗ったことがあると思いますが、ボーディングブリッジ(タラップ)から飛行機の機内に入る時に窓から見える飛行機がいつも同じ方向を向いていることに気付いた方はどれくらいいるでしょうか。

 飛行機は必ず、左側から乗り込むようにタラップが取り付けられます。
 この起源は船の習慣で、昔の船は港に着ける時は左舷を岸壁に着けることになっていたのが基になっています。

 もともと、飛行機の習慣や取り決めは船をベースに作られています。

 飛行機の翼端灯が右が緑色で、左が赤色なのは船の舷灯にならっています。
 飛行機の通信で使われる用語も船と同一の物が多く使われています。
 空港をエア・ポートと呼ぶのも、操縦士をパイロットと呼ぶのも船がベースになっているからです。

 では、なぜ船は左舷を岸壁に着けていたのでしょうか。

 その理由は遠い昔、バイキング船の時代にまで遡ります。
 当時のバイキング船では、舵は船の右側にロープでくくり付けられていました。
 そのため、右側を岸に寄せようとすると舵が破損してしまい、自然と左側を岸につける習慣ができあがりました。

 当時のバイキング船は非常に優秀な船で、北欧から進出したといわれるバイキングはヨーロッパの様々な国を襲い、そして定住していきました。
 こうして、バイキングの操船に関わる習慣等は、その優秀な造船技術とともにヨーロッパに定着し、船を岸壁に付ける時には左舷側を付ける習慣ができあがったと言われています。

 また、船では右舷側をスターボード、左舷側をポートと呼ぶのも、これに由来します。

 バイキング船では右舷側に舵を付けていたことは先に触れましたが、このため舵を操作する(ステアリング)人は右舷側にいました。
 これがスターボードの語源と言われています。
 一方、左舷側をポートと呼ぶようになったのは19世紀以降の話しです。
 それ以前は荷物を上げ下ろしする(ラドボード)ということからラーボードと呼ばれていました。

 しかしながら、気象の激しい海上では、スターボードとラーボードは聞きとりにくく、アメリカとイギリスの海軍により、左舷をポートと呼ぶルールが決まり現在に至っています。

 ところで、一時はこのスターボードとポートが逆の時代があったそうです。
 それは、船の舵が船体の中心に移ったころ、当時の舵は舵軸に操舵棒を刺して、舵軸を中心に舵が動く構造であったため、操舵主が舵棒を操作するのと逆方向に船は曲がる事になり、スターボードと指示すると船は左に曲がり、ポートと指示すると船が右に曲がるようになったそうです。

 このややこしい事象は、舵輪の登場で解決したそうですが、その混乱は暫く続き、タイタニック号の沈没事件の一因にも考えられているそうです。。