ぶどう峠を制覇

2009.5.1




ぶどう峠からの長野側の風景
遠くの山は八ヶ岳ですがあの麓まで
これから行きますよ。




以前から行きたいと思っていました、ぶどう峠越えを今回果たすことができました。
今まで途中の志賀坂峠までは2回ばかり行ったことがありますが、その先をずっと見たかった
し行きたいと思っていました。
その先には、あの御巣鷹山の日航機事故現場が近く、慰霊碑もあります。
更にその先には、標高差1000mあるぶどう峠があり、それを越えると、何と
八ヶ岳高原にでられるのです。




コース:西武秩父(7時発)〜志賀坂峠(9時)〜上野村(昼食)11時発
〜ぶどう峠(13時)〜野辺山(15時)〜韮崎(16時)輪行








さて、午前7時に西武秩父駅を出発です。
まずは志賀坂峠を目指しますが33kmもありますね。
小鹿野の街からは、ご覧のように両神山が望まれます。
特徴的な山の形に何か惹かれますよね。





今回のコースは全長140km+とかなり長距離のツーリングである上、ぶどう峠までの80km
の約半分が初めて行くコースであり、且つ山深い地ですので慎重にならざるを得ません。

一番怖いのが峠に到達する前に日没してしまう事です。
順調に行けば、今回のコースタイムは十二分に取っていますので、日没は
あり得ないのですが、パンクや故障、体調の急変などのトラブルがあったら
時間はすぐ経過してしまいます。

今回の場合は、野辺山までの標高400mの登りの余力を残せなかった為に
時間を浪費してしまい、ぎりぎりで韮崎に到着することとなってしまいました。








まずは、志賀坂峠に到着です。
かなり飛ばしてきましたので、まだ9時です。

ここから先がどうなっているか、不明なのです。
いきなり厳しい道になっているかも知れません。




志賀坂峠までのルートは3回目ですので、問題無くクリアすることができました。
ツールド草津の後だけに、登りの速さにこだわってしまい、立ち漕ぎを混ぜながら
自分としてはかなり速く登りました。
秩父から約600mの高低差がありましたが、35kmを2時間でクリアしましたので
平均時速は17.5km/hとなります。

しかし今思えば、このちょっとした無理が後の行動に影響します。
ぶどう峠とひらがなで書くと優しい峠と一見勘違いしますが、
実は「武道峠」なのです。
これは、いきなり硬派の峠になっちゃうじゃない。
この硬派な峠が待っていることは意識しているつもりでしたが、
この志賀坂峠の登りで頑張っちゃったものですから、ぶどう峠の取りつき
に着いた頃はすでにへろへろでした。(先が思いやられる)







今の季節は黄緑色の新緑が美しい。
快晴だし、道もばっちり整備されており
快適な下りを満喫しました。
汗も爽やかな風ですっと蒸発してしまいます。









下っている途中には、ご覧のような恐竜の足跡が
岩に刻まれた崖があります。
詳細はgoogle等で「さざなみ岩」で検索してください。






上野村あたりのR299です。
道はばっちり整備されておりました。
ふと横を見ると清流が流れており
岩魚やヤマメを皆さん釣っていました。




上野村までの下りは、爽快を絵に描いたようでした。
「これぞ青春のサイクリング」みたいな情景でしたね。
さすがに、秩父です。
古代の地層がむき出した所には恐竜の足跡があったのです。
その他の化石なんかも掘れば一杯出てきそうです。









慰霊の園は言わずと知れた、日航機墜落事故の慰霊碑です。
この慰霊の園に行くことも今回のツーリングの目的の
一つだったのです。
現場には、管理棟があり厳粛な雰囲気が漂っていました。
控え室には千羽鶴があったりして、細かく撮影しがたい
雰囲気があり、そそくさと退散しました。




上野村と言えば、あの日航機墜落事故で一躍有名になった土地です。
思えば、俺たちが社会人1年生の時の夏に発生した事故なのですが
詳細に関しては良くは知りませんでした。

この事故に関して深く知るきっかけになったのが、「沈まぬ太陽」を読んでからです。
4年前にこの本を読んだのですが、その墜落の場面には息を飲み、遺骸や遺品を捜す
遺族の姿には、電車の中で読んでいたんだけど、思わず涙してしまいました。

遺族が必死に遺骸や遺品を捜したけど、腐敗したりバラバラになってしまって、どうしても
引き取り手がみつからない遺骸や遺品を埋葬したのが、この慰霊の園なのです。

現場に人がいれば特に何てことないのですが、慰霊碑の近くには俺たちしかいません。
管理棟や、休憩所には係の人がいるようでしたが、見知らぬ訪問者である
俺たちを遠くから監視している感じがありました。








R299から分岐し県道124を行きます。
いきなり急な坂がありますがそれをクリアすると
通常の道となります。
暫く行きますと、御巣鷹尾根への分岐がご覧のようにありました。
先ほど行った慰霊の園よりも100倍以上濃い所ですので一人では
とても行けません。
ITエンペラー隊でもさすがに、なかなか行けないと思いますね。





慰霊の園でビビッている俺たちです。御巣鷹尾根の墜落現場に行くなんてとてもできませんよ。
520名もの方々が一瞬のうちにその現場で亡くなっているんだよ。
部外者の俺たちが興味本位で踏みこむなんて、できるはずがないじゃないですか。

でも、この日航機事故に関係した人とちゃんと話をした上で、その方と同行して
訪れたいと俺たちは思っています。







やっと来ました、九十九折り。
通常の峠だったら、この手の九十九折りは
2つ越えれば峠に到着しますが、ここは3つ
あったと思います。(疲れ果ててましたので記憶が薄い)




峠の話の前に、昼食の話をしましょう。
上野村にも数件食堂がありましたが、時間が早すぎて開いてません。
早くても11時にならないとだめです。

今回の場合は荷物をできるだけ軽くしたかったので、あまり食料を持ってきて
いませんでしたので、峠に入る前にちょっと早い昼食を摂らねばなりません。
国道沿いにはコンビニなどはありません。
恐らく、街中へ入れば商店などがあったかもしれませんが、もはや街外れです。
国道299は街中を避けたバイパスとなっていますので、意図的に道を外れない
と街中に入れなかったのです。

しかしラッキーな事に、峠への分岐点の少し前に食堂がありました。
よかったよかった。
そこのメニューが面白かったのでちょっと紹介しましょう。
何と、「即席ラーメン定食」だよ。
値段も500円と超安いので、思わず注文しちゃいました。

注文後に、どの即席ラーメンかを選択させられます。
そこに並んでいたのが、サッポロ一番 醤油ラーメン 味噌ラーメン 塩ラーメン
の3種類です。
味噌ラーメンをたのんだのですが、内容はこの即席ラーメンと漬物と
生卵とごはんでした。


量も多くなかなか満足して食べ終わった時に、お店のオバハンが魅力的な
事を言う訳ですよ。

こちらの「すいとん定食」が一番のお勧めなんです。
リピーターの方々も沢山いるので、手をかけて作ってます。
いつ食べても同じ味である事にこだわっていますので、
キノコは使ってません。キノコは季節や種類で味に大きく影響を与えるからです。
更に、700円とちょっと高いので、白御飯じゃなくておにぎりをつけますよ。
もちろん、生卵もつきます。

そんなねー、もうお腹一杯なんで注文できないよ。

次回は仲間を連れて来て、「すいとん定食」を注文する事を約してお店を出たのでした。










九十九折りが終わり、そろそろ峠かなと思いますがご覧のような
峠もどきが3つあったと思います。
そのカーブを曲がったら峠でしょ!
空も広がってるし、高い所はないじゃない。
疲れきっている状況では、その裏切られた状況が
たまりませんでした。(ほんまに辛かった)




今まで50以上の峠を登っているけど、このぶどう峠は最も辛い峠の一つに数えられます。
何が辛いかって?
@アプローチが長い
A九十九折りが3つもある(初めてでしたので、これは辛いですよ)
B九十九折りを越えてもすぐには峠に着かない
C偽峠が3つもある(初めてでしたので、これも辛いです)

今回は平日でしたので、自転車ツーリングしている人は俺たち1人、
バイクライダーも10人くらいしかいませんでした。
よって、かなり静かな峠を満喫できました。








そして、やっと到達しましたよ、ぶどう峠に。
長かった!!
R299からの分岐から17kmありました。
標高差は約1000mですので、ツールド草津
の選手なら、1時間ちょっとでクリアできるでしょう。

と、思っていたのですが、2時間かかっちゃいました。




行動食はウイーダーインゼリー1つしか持っていませんでしたので、2時間の登りは
限界を超えてました。恐らく軽いハンガーノックになったと思います。
途中から、全く力が出なくなってしまいました。
更に、登っても登っても峠に着きません。
精神的なプレッシャーもあったと思います。

3つめの偽峠を越えて出発しようとした時、疲れからかバランスを崩し
右足のクリートが外れず、あえなく立ちごけしました。
尻から倒れましたので何事もなかったのが幸いでしたね。


そう言えば、昨日五日市へ行った時も、コンビニの駐車場から出発しようと
した時、バランスを崩し立ちごけしちゃいました。(これはちょっと痛かった。手のひらの一部は内出血。
ひざ下も少々内出血)
やっぱりクリーとペダルは高速走行にはメリットが大きいのですが
低速走行の時は危険です。
面倒ですが、低速走行時や、停車時は左右両方のクリートを外す事とします。








ぶどう峠の石碑前にて。
居合わせた、バイクのライダーの2人組に撮影してもらいました。
ライダーから言われたのですが、ジャージが塩だらけ
で塩田のようでした。空気が乾燥していてすぐ汗は
蒸発してしまうのですが、塩はジャージに残ります。
しかし、難敵を倒した後の至福の一時でした。




毎回感じていますが不思議な事に、峠を登りきってしまうと今までの辛さはすっと忘れてしまうのです。
峠の直前なんか、心臓が飛び出しそうなくらい鼓動が速いし呼吸も激しく、苦しくてしょうがない
のですが、峠に着いた瞬間に心拍も呼吸も1分もすれば落ち着きます。

ですから峠に着いて1分経つと、苦しさはすっかり取れ、達成感に満たされる事となります。

今回は2人連れのライダーと峠の感動を共有しましたが、ライダーも原動機を使っているものの
自然を全身で感じながらここまで来ているのです。
自然を感じながらここまで来たという点で彼らとは共通点があります。

しかし、汗が乾いた後の塩にまみれている俺たちを見て、ライダーは驚いていましたが、夏だったら
こんなもんじゃないよ! 出血するような汗が滴り全身汗まみれの俺たちを見て
もっと驚くでしょうね。


ところで、中野新橋に昼は「さしみ定食」などを食べさせてくれる小料理屋がありますが、
そこのマスターが、何とライダーなのです。
ひよんな事で峠の話になったのですが、その時彼はバイク俺たちは自転車と
違いがありますが、峠に対する、自然に対する思いはどうやら同じものがありました。

話し出すと、止まらないくらい様々な話になるのですが、昼の忙しい時です、マスター
俺たちと話ばかりはしてられません。
俺たちも忙しそうなマスターを相手に、いつまでも話をすることもできませんよ。
近々、夜に行ってカウンターで3時間くらいマスターと語りたいと思っています。

そのお店の名は「てっぽう」。
中野新橋、貴ノ花部屋すぐ前。













場面は変わりまして、八ヶ岳高原になります。
この環境の激変も素晴らしい。
素晴らしい高原の風景が広がっていますが
野辺山までおよそ10km、ずーーっと登りです。
この場に及んでの登りは辛いの一言でした。




ぶどう峠から八ヶ岳へ下ると小海に着きます。
小海までの下り坂はずーーーっと下りなのですが、峠直下はさすがにある程度傾斜はありましたが
それ以降はだらだらとした下り坂でした。
群馬側の急坂と較べるとその差はでかい。
30分程度でさーーっと下ると、小海に到着です。
ここから、R141を南下します。

ところで、北へ行くのは北上、南へ行くのが南下っていいますよね。
今回の場合は南下するのですが、字ズラだけ見ると何か下り坂を行くように
感じませんか?

そして、この小海からの上り坂がばかにできません。
野辺山まで登りなのですが、その標高差は400mもあります。
元気だったら何てことない登りですが、ここまで80km走行して且つ峠を2つ越えて
来たのですっかり足を使い果たしているのです。

しかし目の前には雪化粧した八ヶ岳が見事にそびえています。
高原の風景も広がっています。
空気も爽やかで、リゾート地の高原に来たなと体全体で感じることができます。
その素晴らしい景色に感動です。

何なんだよこの坂は! 
更に言えば、若者がぴったり後ろに付いてきてるじゃない。
何か勝負を挑んできてるみたいでした。
アリスの「チャンピオン」じゃないんだからさ。
「獣のように 挑戦者は 襲いかかる 若い力でー」

「もうねー、勝負する力はないの、先に行って」
とばかりにちんたら走ってたら、痺れをきらした彼は先に行きました。

でもねー。抜かれると追いかけたくなるじゃない。
着実に追いかけて行くと、100mくらい登った所で彼は休んでましたよ。
スパートはかけずにそのまま行くと、そそくさと出発してました。
坂がいちおう終了する所が、目の前に八ヶ岳が見える素敵な所で、
彼はそこで休んでました。

俺たちも写真を撮りたかったけど、ぐっとこらえて先に行っちゃいます。
その先の坂が途切れる所で写真を撮っていると、彼が必至こいて抜いて行きます。

ここから、野辺山までほぼ直線の登りなので、めちゃめちゃ辛い所です。
勝負しても良かったのですが、今日は許してあげましたよ。








野辺山や清里は過去に何回も来ていますが
まさか自転車で来ようとは。
車では、あまり感じない坂を堪能させて
戴き感謝してますよ。





そして、やっと着きましたよ野辺山に。
長かったー。
八ヶ岳高原は、ここ野辺山と清里が有名所でしょう。

この地を走る小海線も高原列車で有名ですよね。
今回も、駅前に2台の観光バスが止まっていましたが、どうやら
近くの駅から野辺山まで小海線を楽しんでもらうツアーみたいでした。

でもねー、この小海線、本数が少ないよ。
小淵沢方面のダイアを見ると、始発が6時13分 その後は1時間に1本あれば良い方
で10時台 12時台 14時台が1本もありません。

小諸方面も似たようなものです。

GW中は臨時列車も出ているようでしたので多少は便利だったのかな。







この最高地点まで、ずーーーっと登りでした。
確か登り始めの小海は標高1000mでしたので
約400m登ったこととなります。
通常だったら大した事ない登りですが
もう足はすっかり使い果たしていますので
辛いを通り越した辛さでした。




さて、ついに本日の登りはここで終了となります。
ここからは、韮崎までずっと下りとなり、平均速度も今までの登りは10km/hであったのに対し30km/hとなります。
本当は、途中の清里駅方面へ行き、できれば清泉寮でソフトクリームなどを食べたかった
のですが、登り坂だし、時間もぎりぎりでしたので、パスしました。

こういった高原の楽しい環境になると車の有難さが身にしみました。








道の駅 清里南の光景です。
最近は川越しに鯉のぼりを泳がす
光景をよく見かけます。
五月の陽光に合う光景だと思いますね。




野辺山からの下りは劇的でした。
今までずっと登って来た環境に慣れていた俺たちとしては
こんなに下っても良いの?と思われるくらい下りました。

今日は一日快晴で、夕方近くなった今は涼風が吹いています。
その風に泳ぐ鯉のぼりは気持ちよさそうでした。









韮崎までは野辺山から約30kmありますが、
その長い下りのお陰で、1時間弱で到着できました。
今思えば、爽快な下りでした。(疲れてて爽快でもなかった)
甲府まで20kmも走れば到着できますが、疲れてますし
交通が多い道を行くのは危険ですので、韮崎から
輪行することとしました。





いやいやー、今日は本当に長い一日でした。
そして、何かどえらい事をやった充足感で一杯です。
駅のホームから望まれる山々の右端に両神山らしき山がみえます。
そして左端には八ヶ岳が望まれます。
この風景の右から左まで更に峠を2つ越えてここまで来た自分って
すごいんじゃない!?
いつものように、たんまりとお酒を仕入れ、輪行して帰ったのでした。
今日一日を振り返りながら乗った特急あずさの雰囲気も最高でした。

さて、次回はITエンペラー隊の有志を募ってこのコースを行きますよ。
その時は、食料は十分に用意し、見るべきポイントを絞って、余裕を持って
望みたいと思います。
さあ、皆さん行きましょう!