炭素製品の基礎知識 (中級編) 2013.1.18 |
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久しぶりに10年以上前に制作しましたページに加筆します。 「俺たちの掲示板」で井上さんが炭素製品の基礎知識の中級編連載を希望されましたので、 ご要望にお応えしまして拙いながら執筆させていただきます。 ご意見、ご感想、ご要望等ございましたらどしどしお寄せください。 |
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そうですね、俺たちとして一歩深掘りして炭素製品に関して言えるのは、カーボン製品の うち「カーボンブラック」に関することかな。 初級編では、カーボンブラックの概略と用途を書きましたので、今回は工場の人間模様 などを中心に書きますね。 1.カーボンブラックは手造りの製品だ! だから製品には血が通っているんだ。 一般的には装置産業と言われているカーボンメーカーですが、俺たちから言わせると 全く違うと思います。 確かにカーボンの発生行程やタンクへ運び込む行程、その監視システムはセンサやコンピュータを駆使して 自動化されていますね。 それじゃ、その他はどんな行程があるかって? まずは、カーボンブラックを発生させる行程で活躍してるのが炉ですが、レンガを手で積んで造ってるんですよ! その他の設備も当然、手で造っていますね。 ターゲットの製品ができているか検査する必要がありますが、そのサンプルを採取し 検査係に持っていくのも人の手で実施。 検査係も、サンプルを検査機にかけ、その結果を目視して判断しますので、人によりチェックを 行っていると言えます。 そして出来上がったカーボンブラックは、品種ごとにタンクに投入されるわけですが、 タンクに入ったからといって製品になった訳ではありません。 そうです、パッケージに梱包して初めて製品になるんです。 初級編のおさらいをしますと、梱包形態は大きく分けて次の3つとなります。 1.バルク車(タンクローリー)(10t)にて輸送 2.ゴム梱包(ゴム製のコンテナ)(500kg)に梱包して輸送 3.パーパーバッグ梱包(紙製のパーパーバッグ)(20kg)に梱包して輸送 この梱包作業を実施しているのは、私が行程係で生産・出荷管理をしていた頃は 手作業でした。(今はどうなのでしょう?) 現場作業員が不足している時などは、良く現場作業を手伝ったものです。 当時は私も若く、まだ25〜26歳でしたので体力はあったのですね。 作業といってもパレットに製品を積む作業なんですが、作業が終わると 頭からつま先までカーボンブラックの黒い粉塵で真っ黒になってしまいます。 それこそ、「シンチンとも真っ黒」になってしまいます。 お客様へ搬送する手段はトラックです。 当然、トラックの運ちゃんが運転してお客様へ搬送します。 スケジュールとしては、遠いお客様の場合は夕方頃、工場発、翌日朝、搬入 昼ごろ工場帰還。 近いお客様は、早朝工場発、AM搬入、夕方工場着。 こんな感じかな? どうですか? 機械を使うべき所は使ってますが、基本的には「カーボンブラック」は 我々が手で製造し、お客様にお届けしてるんです。 |
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2.IT化が必要だ!! 今記述している話は、25年くらい前の話なので恐らく「今」は違うと思いますが PCなんてほとんど使っていませんでした。 もっと言えば、私が赴任した時は全くPCは使っていません。 日々の出荷指示は、製品ごとの受け払いカードを基に出荷指示書もハンコ&手書きで作成し 青焼きでコピーして現場に配布していました。 月度の締めなんて大変です。 1ヶ月間のデータを電卓で計算してA3の集計表で集計していました。 手作業なんで、それはもう大変でした。日々の作業は当然ありますので、その後に締め切り作業を 行うわけですよ。 我々の、行程係は激務だと言われていましたが、やってみて初めてわかりました。 もっと言えば、これに年度の締め切り及び翌年度の生産計画の資料を作成するとなると もう帰れません。 その頃は、毎日24時くらいまで仕事をしていました。 しかし、工場から寮までは車でわずか10分です。 大変なんですが、東京とは事情が違いますよね! さてさて、この集計業務ですがPCで実施すれば大した事ないですよね。 でも、その時はPCはないし個人で持っている人は一部しかいない。 その当時は、さすがの私もPCを使用する力量もないし、使用するなんて夢のまた夢の話でした。 ところが、ひよんな事から我が事務所に、NECのPC98が一台導入された! 最初は関係ないと思っていましたが、製造課の「コボちゃん」が使い方を教授してくれます。 その時は「Lotus123」かなんかの使い方を一般的に教えてもらいました。 「これ使ったら、式を入力しさえすれば、データを入力すれば自動で計算してくれるじゃない?!」 月度の集計にも年度の集計及び生産計画にも使えるんじゃない??」 その後、忙しい「コボちゃん」を終業後に捕まえては、「Lotus123」の使い方を習います。 そして完成したよ、月度の受払表を「Lotus123」で実施する表が!! これにより、本当に飛躍的に月度の締めの集計作業時間は劇的に少なくなりました。 (恥ずかしながら、赴任当初の3ヶ月は集計表の計算がまともにできず、縦横がなかなか合わず 徹夜的な事を随分しました。しかしその副次的成果として、今でも電卓のブラインドタッチができます。) |
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3.現場との付き合い 変な話なんですが、我々は工場を司る役割で「執務」と言われており、一方、現場で作業を実施している 方々は「実務」と言われていました。 工場の現場では、当然「実務」の方々の方が経験が長いので仕事を良く知っています。 一方、「執務」の我々は、詳しい方々も沢山いますが、私のように良く分からない人も多々いるわけです。 「実務」の方々からすれば、私が赴任した時などは、「また訳のわからない若造が来たよ!めんどくさいな」 てな事を考えられていたことでしょう。(お役に立てなくてすみません) 一方、世話にもなるので歓待もしてくれます。ちょっと荒いですがね。 その一発目の洗礼が居酒屋での「歓迎会」でしょう。 毎回、行程係の新規参入者はつぶされるそうな。 私は?? 恐らくつぶれなかった??と思います???? それからは、色んな場面で飲みに行ったな。 花見の時なんか、現場の方々が全てセットしてくれて私などは飲むだけ。 夜の公園で、炭火で焼いた「トンちゃん」(ホルモンです)は最高に美味かった。 その時は、前後不覚になり、気が付いたら寮で寝てました。 今、思い出しても最高の酒宴でした!!本当に有難うございます!!! |
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4.社宅での生活 歴史が古い企業でしたので、寮とか社宅は完備していました。 27歳の時に、嘗て本社に勤めていた時に知りあった電話交換手の娘と結婚し、社宅に住む こととなりました。(このエピソードなどは、まあ良いではないか?昔の事だし) 社宅は3LDKで新婚の2人にとっては広すぎる環境でした。 私としては寮の方が狭いながらも自由な生活を送れて良いなと思っていましたが、 しかし、心配なのが東京からこちらにきた嫁さんですよ。 どうなる事かと思っていましたが、やはり女は強い!! 隣の部屋の奥さんと知り合いになり、ほとんど毎晩、ベランダで壁越しに何やらペチャクチャ 話してます。寒いのにねー。 そんな状況でしたので、女房的には田舎に来て不満に感じながらも、何やら楽しい日々を 送っていた模様で一安心でした。 |
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5.行程係の仕事 私が所属していた組織ですが、大きく分けて2つの仕事から成り立っています。 一つは生産管理、今一つは出荷管理です。 1.生産管理 営業からくる販売予想数値と過去の出荷トレンドを見て、年度の生産計画及び月度の生産計画を立案します。 そして、実際のタンク在庫、コンテナや袋詰めされた製品在庫を基に、短期的な受注状況を見ながら、週単位の 生産計画を立てます。 しかしながら、当然、出荷量と生産量はイコールではないので、日々の調整が必要となります。 具体的には、バルク車や袋詰め作業でどのタンクからどれだけカーボンを抜くか、 どのタンクを空にするかを決めつつ、どの品種を何日間製造するかを決めます。 そうなんです、製品を不足させてもダメだし、タンクが溢れてもダメなんです。 タンクが溢れそうになると夜中でも製造係から電話がかかってきます。 その時はどうなるかって? 次の製品に製造を切り替えてもらうしかありません。 夜中で人員も少ない中の製品切り替え作業は大変です。 翌日は、朝早く出社して製造現場に謝りに行きます。(何回もありました。すみません。) 2.出荷管理 小口ユーザーは各拠点にある倉庫に定期的に出荷するだけですので作業は簡単です。 一番大変なのが、トヨタカンバン方式の対応でしょう。 通常の出荷パターンは前日のAM締め切り、翌日納入でした。 ところが、カンバン方式は、一日2回納入なのです。翌日のAM納入分は前日の午後に カンバンによる受注で出荷します。当日の午後納入分はAM10時くらいにカンバンを受け取り 即出荷準備をしPMに納入するというパターンなのです。 スピードが勝負なんですね。 出荷管理者が袋詰め製品の在庫管理を兼ねていますので、袋詰め作業指示を実施しています。 この行程係の仕事は毎日実施すべき仕事が決まっていますし、時間もほぼ決まっています。 自分のペースで仕事を組み立てる事ができず、常に追いたてられているので、休暇も取りにくく 辛い仕事だと思います。更に私の所属していた工場はメインにして東洋一のカーボンブラック工場でしたので、 その生産量、出荷量とも物凄く多かったのです。 そんな経験をしていますので、現在別の会社で働いていますが、その生産・出荷に関しその甘さに 我慢できない状況ですよ。全くもって甘い!!遅い!柔軟性が無い! |
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6.品質管理について カーボンブラックは見た目には黒い粒子なので、その品種は目視では判断できません。 パッケージで判断するしかないのです。 どのタンクにどの品種が入っているかを明示する必要がありますし、製品もどのタンクからいつ詰めたか 分かる管理をする必要があります。 袋詰めであれば、ロットナンバーを各袋にプリントします。 それでも一目で判断できませんので、品種ごとに違う色の袋を用意して袋詰めを実施しています。 納品書も嘗ては手書きでしたので、指示書通りに記入されているか、まず記入者が自己チェックし 第三者が更にチェックするダブルチェックを実施していました。 現在は、恐らくIT化され転記などせずに納品書を発行したり、製品にバーコードなどを付けているかと思いますが しかし、その根本原理を知るべきかなと思います。 何でそのような事を実施しているか分からないと変化に対応できないからね。 |
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7.カーボンブラクを使用しているユーザーについて 一般的に言えば、ゴム製品の補強材としてカーボンブラックは使用されているケースが多いです。 何と言ってもタイヤメーカーが一番のお得意さんですね。 コピー機のトナーや黒インクの原料としても沢山使用されていますね。 総じて世の中の黒い製品に、カーボンブラックは使用されているとみて間違いありません。 人造黒鉛電極を含めて、世の中を影から支えている製品なんでしょうね。 だいたい、こんなものでしょうかね? 何かご質問がございましたら「俺たちの掲示板」に投稿お願いします。 分かる範囲でご回答いたします。 それでは、また宜しくお願いします。 |