2000年 富士登山記

(富士宮口5合目〜富士宮口8合目〜御殿場口8合目〜頂上〜御殿場口下山〜宝永山火口〜富士宮口5合目)
大阪〜富士宮口新5合目
7月17日に梅雨が開け、梅雨明け10日の安定した天候で今年は登山できると確信していましたが、何と台風が伊豆諸島方面に接近中との事。天候が荒れているようだったら帰ることを覚悟して大阪を出発。立田氏宅をAM6時30分と、予定通り出発。昼くらいに5合目につけばご来光を見た登山客が下山してくる時間だし、当日登る人はまだきていないということで駐車場に駐車しやすい時間と読みました。

AM9時頃浜名湖サービスエリア着。ここのサービスエリアは名古屋在住以来いつも必ず立ち寄ることとしています。あさりの貝汁定食を食べる為です。当時は粋に名古屋から貝汁定食を食べにきて浜松西インターで折り返して帰るということもやってました。(しかし去年あたりから貝汁定食はなくなってしまった)
今回驚いたのは、この時間の食堂は朝食バイキング(800円)のみの対応しかないことです。ちょっと高いと思いながら席につきましたが、そのメニューの多さに結果的に満足しました。和洋のおかずにデザート、コーヒー、ジュースと取り放題です。大満足でした。

12時頃富士インター着。一般道には下りず西富士道路にそのままのると富士山スカイラインへの入り口はすぐです。
富士山スカイラインに入って暫く行くとコンビニが2件ありますので、そこで水、お菓子、弁当等を買えます。富士インターを降りて約1時間で富士宮口新5合目に到着です。

予想通り、下山する人が多数あり、無事駐車場に駐車ができました。しかしながら、写真の通りかなり駐車場は混んでいます。



富士宮口新5合目  ご覧のように駐車場は満杯です。


 富士宮口新5合は他の登山口に較べて一番標高が高い場所にあります。


ガスはかかってますが、天気予報は晴れです。明日のご来光が楽しみ。
富士宮口新5合目

富士宮口新5合目は2400mと他の口に較べて標高が一番高いせいか歩き初めから息苦しい感じがしました。さらにこの口の特徴として、富士山の頂上である剣が峰にある測候所のドームが見えることです。(他の口は頂上は見えません)手が届きそうな近さに見えますが、とんでもありません。ほんとに遠いですから。


新6合目の雲海荘前にて。ここの小屋には美人姉妹がおりました。撮影できなくて残念。


ここで昼食。今回の登山は登り始めの標高が高いので登り始めから息苦しい。


左記、昼食した所から頂上方面を仰ぐ。新5合目から頂上は見えるが登り始めると見えない。
(上記写真まで画像データを軽くする作業を実施。残りは後日)

新5合目〜新7合目


新五合目から雲海荘のある新六合目は坂道を一のぼり、約20分で到着できます。この新六合目から宝永山火口まですぐです。この宝永山を見るだけでも価値がありますので、体力に自信がない方は宝永山の見物でOKです。

体力のある人は上を目指しましょう。雲海荘からしばらく登ると本6合目と言えそうな小屋の跡があります。今回はそこで昼食をとりました。

本6合目から新7合目も約20分で着いてしまいます。ここまでは実はウオーミングアップです。富士宮口の富士登山は新7合目から始まるといってもおかしくありません。


新7合目を見下ろす。新7合目から元祖7合目の間がめっちゃ長い。


元祖7合目と8合目の間で撮影。岩盤が現われ始め登りは急だしかなり疲れます。
新7合目〜元祖7合目

ここの登りは今まで歩いた距離の2倍近くある距離です。勾配もそこそこ急であり息がきれます。およそ標高も3000mくらいありますので休憩していてもなかなか荒い呼吸はおさまりません。息をしていても空気が入ってこないという自覚をぼつぼつ感じる所です。元祖7合目までくるともう一安心です。本日宿泊予定の赤岩八合館はそこに見える8合目から平行に富士山を横切り(トラバースと言います)ちょっと登った所にあるのですから。


この時はまだ、立田氏も元気。


ますます、岩場が多くなります。富士宮口は下りが大変です。


8合目にやっと到着しました。御殿場口は、ここから平行に横切る道を200mくらい行くとあります。
元祖7合目〜8合目〜御殿場口赤岩八合館

元祖7合目からは岩場になりますので登山に慣れていない人にとっては辛い登りになります。ここまでくると空気は薄いし傾斜は急だしで、体力差がかなり出るところです。

ここでワンポイントレッスン
Lesson1  呼吸法    3000mを越えますと気圧は地上の3分の2になりますので、通常の呼吸で登っていると酸欠になり高山病になる恐れがあります。そこで俺たちは以下の呼吸法を提案致します。それは、2歩一呼吸法です。1歩踏み出し息を吸い1歩踏み出して息を吐く。最初はちょっと不自然ですが、暫く歩いているうちに調度良くなります。気圧が3分の2の世界では多少不自然でも呼吸を多くする必要があるのです。


Lesson2  歩幅   Y2K富士登山でも述べましたが、登る歩幅は地下鉄の階段の歩幅がベストです。それ以上だと体力を消耗しますし、それ以下だと距離がかせげません。地下鉄の階段を登る要領でゆっくりのぼる。このゆっくりのペースはLesson1の呼吸の速度に合わせて登るのがこつです。あと地下鉄の階段の歩幅を確保するためには岩場をどう登るかを判断する頭脳も必要です。地下鉄の階段の歩幅が確保できる岩を伝う為にどうルートを取るか考えながら登ることを心がけてください。

8合目に着けば御殿場口のルートはすぐです。8合目の小屋を過ぎ、トイレの前を過ぎた所で、そのまま登ると富士宮口、右折して平らな道を行くと御殿場口に合流できます。この道は、ブルトーザーの道らしいですが特に危険な所も無く、200mくらい平らな道を行くと赤岩8合館の標識がありそこを指示通りに行くと御殿場口登山道に合流します。
他のHPでの紹介で50mくらい登ると到着すると書いてありますが、どう見ても50mじゃありません。恐らく100m以上登ってやっと到着です。
しかしながら、8合目の小屋からあまり離れていないのにこの静けさは何なんだ。全然人がいません。
皆さん8合目からは御殿場口へ行き登った方が空いてて絶対いいですよ。




やっと小屋に着き、ウイスキーのウーロン茶割で早速一杯やってます。高山での酒は効くー。


小屋の前でも一杯。
御殿場口赤岩八合館

御殿場口登山道の8合目にある小屋ですが、ここから頂上までもう小屋がありません。他の口は8合5勺小屋とか9合小屋がある中でここ御殿場口にないのは登山者がそれだけ少ない事が原因でしょう。事実、富士宮口であれほどいた登山者がここ御殿場口にきた瞬間全くいなくなり、その静寂さに驚いた俺たちであった。
今回の富士登山で当初予定の須走口を変更した理由の一つがこの赤岩八合館に宿泊したかったことです。何故かって。他のHPで「対応が良いと評判の山小屋」とか「夕食のカレー食べ放題」と紹介しているのでついつい行きたくなってしまったのです。
それでは、俺たちによる赤岩八合館の感想を書きます。
1.従業員の接客態度  まあいい方でした。 5段階評価で4
2.夕食のカレー      うわさ通りの食べ放題。味もよし。 5段階評価で5.
3.朝食           目玉焼き、漬物、味噌汁、他とバラエテイあり。 5段階評価で5.
4.小屋の設備環境    ストーブがあるが寒い。寝室と広間が一緒であり落ち着かない。コタツはあったが従業員用であり、寒いのに入れてくれない。布団は湿っておりくつろいで寝る環境でない。便所は超汚い。 5段階評価で2
5.小屋の雰囲気     ここ御殿場口は富士登山駅伝の舞台であるせいか、恐らく出場者の合宿所として使用されており、いかにも体育会系の学生が10人くらい宿泊しており、一般登山客の広間での団欒を拒否するような雰囲気があった。あんなやつらを宿泊させている内は一般のお客さんは泊まりにくい小屋であると思いました。 5段階評価で1

総評としては、宿泊層が言ってみれば悪い客層なので次回は宿泊したくない山小屋であると結論づけます。次回は須走口の見晴館に泊まるつもりです。立田氏も同意見でしたので恐らく正しい判断だと思います。


目の前の湖は山中湖です。ご来光の時は通常、雲海に隠れている事が多く珍しい光景です。


ご来光の一瞬。太陽は出だすとぐんぐん上ってきます。ほんと、早いよ。


ちょっと目をそらしているとご覧のようにずいぶん上っています。しかしきれいですね。

赤岩八合館前から見るご来光です。山中湖の向こうから登る太陽は幻想的で何回見てもいいものです。雲海がないご来光は過去1回しか見た事がありませんので貴重な体験でした。ご覧のように8合目からのご来光もむちゃくちゃ素晴らしいです。体を酷使して頂上で見る必要はありません。俺たちの持論は、「頂上でご来光を見るよりもお鉢巡りをした方が尊い」。


御殿場口9合目付近から頂上を望む。頂上に近づくにつれて岩がごろごろしておりかなり上りにくい。しかし空いているのでマイペースで登れます。




御殿場口頂上です。他の口に較べてかなりさびれてます



8合目〜頂上

ご来光を見た後、小屋で朝食を取り5時半に出発。しかし、あろうことか連れの立田氏が頭が痛いという。高山病の兆候である。これ以上、登るのは不可能だという。仕方なく、立田氏は下山。ここで無理をさせると高山病がひどくなりとんでもないことになりかねません。
私だけで山頂を目指す。
8合目以上の富士登山はどの口も同じくらいしんどいです。勾配が急になり岩場であり、何にも増して空気が薄い。8合目に宿泊して体力が回復していますので出足は軽やかですが、ここで急いではいけません。上記ワンポイントレッスンの通りに登って下さい。そうすれば、頂上まで2回くらいの休憩で登りきれます。9合目あたりになると、登山道の隅で高山病と思われる方が苦しそうに長時間休憩をしている姿を良くみかけますが、登山では無理をしては命取りになります。立田氏も恐らくあのまま登ったらこうなっていたでしょう。体調が悪くなったら下山する。これは鉄則です。高山病は下山しない限り治りません。(1週間とか滞在すれば別です。また、下山するとうそのように元気になります)


頂上

御殿場口の頂上はまた人影も少ないです。銀明水の井戸があり(下写真の鳥居)その先には火口が大きく口を開けています。
本当は、火口の写真、剣が峰の写真を撮りたかったのですが、何とデジカメの電池切れで撮れませんでした。大変残念です。
ほんの100mくらい行きますと富士宮口の頂上があり、その繁盛ぶりは同じ山頂とは思えないくらいです。
富士宮口方面から剣が峰に登るには馬の背と呼ばれる急な登りがまっています。そのざらざらの道と急勾配で上りはかなり厳しく下りは何かに捕まらないと素人の人は降りられないほどです。

ここでワンポイントレッスン

今回の登山では写真のように伸縮できる登山用ステッキを2本使用しかなり有効でしたのでその使用方法を紹介します。


Lesson1 登り    富士登山の名物木製の杖(各合目で焼印を押してもらうやつ)を使って登っている人を随分見かけます。その杖を使って有効に登る方法は、登るペースのタイミングをとる、急坂で杖をつきバランスをとる事です。俺たちはそれで登ったことがないので判りませんが、結構重たいのでうまく使わないと疲れると思います。
中には、その杖に体重をかけて体を引きずる様に登っている人がいますが、結果的にすごく疲労する登り方です。(手も背筋も疲れます)
俺たちが主張する登り方は、基本として「平地を歩くと同じように登る」事が一番楽な登り方です。
「平地を歩くと同じように登る」にはどうするか。それは重心を重力方向に真下に置くことです。前傾しすぎてもつんのめってもいけません。その調整は膝と腰で行います。ステッキの役割は、バランスを取る事とタイミングを取ることですからステッキには体重はかけず、足の動きにに対応するする形で地面にを叩く感じで登るのがベストです。その意味からして両手にステッキを持つ方がベターであると思います。

Lesson2 下り   登山で下りほど難しいものはありません。いい調子で早足で下っていると膝を痛めます。
下りも登りと同じように「平地を歩くと同じように下る」のが一番です。「平地を歩くと同じように下る」には、これまた登りと同じように重心を重力方向に真下に置くことです。前傾しすぎてもつんのめってもいけません。その調整は膝と腰で行います。特に下りの時によく見かけるのが高度が怖いので腰を引いたへっぴり腰で歩いている人です。私はスキーは得意ではありませんが(3回くらい実施)、スキーで滑る要領で、両手のストックならぬステッキを使いバランスとタイミングを取って下るのです。また体は谷方向に常に正対する感じで下ります。腰から下で左右に方向転換しています。
今回始めて両手にステッキを持って登山下山しましたがバランスもタイミングもうまく取れましてかなり楽な登山ができました。

御殿場口の下り

赤岩八合館まではさっき登ってきた道である。ぼつぼつ登ってくる人とすれ違います。挨拶するのに調度いいすれ違い具合です。ダブルステッキのお陰で安定した姿勢で下れてかなり楽です。富士山の下りも辛さが半分に感じました。
名は忘れたが、赤岩八合館から2つ下の小屋の下で登山道と分かれ下山道は大砂走になります。今回の登山もショートスパッツを念のために装着して下山したが、この大砂走では装着は必須です。くるぶしあたりまでバンバン砂が当たったり潜ったりします。砂のクッションが柔らかいので膝を痛めません。
飛ぶように下山しましたが、抜いた人が1組しかいないくらい静かな下山でした。前後左右砂しかなくちょっと怖い感じもしましたが楽しい下りでした。あっという間に、宝永山火口経由富士宮口への分岐点に到着しました。大砂走と別れを告げ宝永山へ。
宝永山火口

宝永山火口は一番最近に富士山が噴火した場所だけあってその火口はまだそんなに風化していません。でっかい火口をみるにつけその噴火のすさまじさが想像されます。この火口分の土砂が関東に降り注ぎあの赤土があるのだなと思うにつけすごいと思います。
やはり富士山は美しい山である前に火山として恐れられていた山であります。だから関東にはいたる所に浅間神社があるのです。
宝永山火口に下る道はかなり急な傾斜があり、しかも砂でなくごろごろの岩の道でありかなり下りずらい道です。落石に気をつけたり危なっかしい足元を気遣ったりしながら慎重に下る必要があります。また、その急傾斜に足がすくむ場面も多々あります。
何とかくだるとそこは火口の中です。俺たちの感想としては、甲子園球場にいるようだったということです。そのすり鉢上の地形の中は無風でありじりじりと太陽光線が肌に痛いです。上空は風があるようなのですがここは無風です。
大休止している登山客が多い中、立田氏が待っている新五合目をめざし小休止で出発。6合目に行くには火口を抜ける為の登りがありしばらく歩かなければなりません。しかし、ここまでくれば余裕です。多少は疲れていますが、余裕の表情で6合目を無休憩で過ぎ5合目に下ったのでした。
総括

こんな形で2000年。20世紀最後の富士登山は無事終了しました。今回の登山での課題は立田氏が高山病にかかり下山を余儀なくされたことです。やはり、富士登山の一番の敵はその気圧の薄さでした。
この気圧差の問題を克服しない限りは富士登山マスターにはなれないでしょう。
とりあえず、立田氏の状況を見るに、2000mから登った時(須走口)は高山病にならず、2400mから登った時(富士宮口)は高山病になった事から、どうも富士登山の入門は標高が稼げる富士宮口でなく、標高が低い須走口が良いのではないかと結論つけたい俺たちです。
従いまして、来る21世紀の富士登山は上記結論プラス山小屋の良さから須走口から登ることをご提案いたします。