うそつき。



その日、センセエが“しゅくだい”をだした。

「この画用紙に、ミンナが住みたい町を描いてきて」

みんなは大きなこえで返事をして、画用紙を受けとった。

こまったぼくがセンセエに
「住みたい町なんて、思いつきません」と言うと
センセエは
「何でもいいよ。キミがずっといたいと思うところを考えてごらん」と言った。

けどね、センセエ。
ぼくには本当に住みたいところなんてないんだ。


家に帰って、机とにらめっこして、もうすぐ5時間。

仕方がないから、ぼくは画用紙を青いクレヨンでぬりつぶした。
どこにも白いところがないように
どこまでも、青く、あおく。


ねえ、センセエ。

ぼくには住みたいところはないけど
できれば海のようにしずかで、何もない場所がいい。
できれば空のようにおだやかで、誰もいない場所がいい。

ぼくがずっといたいところは、そんな場所なんだ。



つぎの日、ミンナの絵が廊下にはられた。
けれどその中に、青いいろはどこにもなくて。


放課後になって、ぼくはセンセエから呼びだしをうけた。

ぼくがセンセエを“うそつき”だと知ったのは、この日のこと。